IT分野での起業は初期費用が比較的少なく、万が一失敗してもリスクを抑えやすいことから、「IT事業を始めてみたい!」と考えている方は少なくありません。
一方で、「未経験からプログラミングを学んで起業できるの?」「自分のアイデアは本当にビジネスとして成立するのだろうか?」など、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、未経験からプログラミングを習得し、自らIT事業を立ち上げた筆者が、実際の経験を踏まえながら、IT業界の成功事例とその秘訣をわかりやすく解説します。
サービスアイデアをどのように生み出し、世の中に認知させていったのか――成功者たちの具体的なプロセスを学ぶことで、これから起業を考えている方も自分のビジネスプランを見直し、次のステップに踏み出すきっかけになるはずです。
ぜひ最後までご覧いただき、IT起業への第一歩を踏み出すヒントにしていただければ幸いです。
IT起業のメリット
近年、IT分野はベンチャー企業から大手企業に至るまで、革新的なプロダクトやサービスが次々と生まれ、市場の可能性が拡大し続けています。
IT起業の主なメリットは以下の6つになります。
- 少人数・低コストで立ち上げられる
- 自由な働き方ができる
- 失敗のリスクが低い
- 市場の拡大とDX(デジタルトランスフォーメーション)
- 世界に挑戦できる
少人数・低コストで立ち上げられる
IT起業のメリットの一つは、開発環境や配信プラットフォームが整備されており、少人数でもサービスを素早く立ち上げられることです。
インターネットが広く普及した今、サーバーや通信インフラのコストは大きく下がり、スマホアプリやWebサービスの開発者は自宅からでも始められます。
ハードウェアが中心の産業に比べ、初期投資が少なく済むため、学生やフリーランスからの起業も十分可能です。
自由な働き方ができる
基本的にPC一台あれば仕事ができるため、在宅ワークも可能です。
ただ、立ち上げ段階で営業を行う必要がある場合、商談や会食などが必要です。
私の場合、開発は自宅で行い、時々営業で外に行くというライフスタイルです。
失敗のリスクが低い
IT業界はPCやサーバー代のみの負担から始められるため、在庫や店舗がないため、失敗してもリスクを抑えることができます。
失敗を次の事業に活かすことも大事です。
市場の拡大とDX(デジタルトランスフォーメーション)
企業や行政機関など、あらゆる分野で従来の業務プロセスをIT化しようとする動き(DX)が加速しています。
たとえば紙ベースで行っていた申請手続きをオンライン化する、社内の書類決裁をクラウドシステムで一本化するなど、多様なニーズが日々生まれています。
こうした需要に対応するITサービスを開発・提供すれば、多くの顧客を獲得するチャンスがあります。
世界に挑戦できる
物理的な制約が少ないITサービスは、国内だけでなく海外市場への展開も視野に入れやすい点が魅力です。
英語版のUIを用意し、決済・配送といった国際対応さえ整えれば、場所を問わず顧客を獲得できます。
特にソフトウェアやWebアプリなどは、日本国内のみならずグローバルに競争・共存できる可能性を秘めています。
私も自分のサービスが海外で展開することは夢です。
IT業界での起業のデメリット
IT起業のデメリットも解説いたします。
- 技術の進歩が早いため常に情報をアップデートする必要がある
- アイデアを真似されやすい
では解説していきます!
技術の進歩が早いため常に情報をアップデートする必要がある
IT業界では技術の移り変わりが本当に早いです。
そのため常にトレンドを追いかけて情報をアップデートする必要があります。
近年はAIが流行っていますよね。AIを駆使したプロダクトが多く世に出回りました。
最新トレンドに敏感だとこういった世の中の流行に合わせてうまくサービスを出すことができるため、日々ニュースやメディアをチェックしておきましょう。
アイデアを真似されやすい
先ほどお伝えした通り、IT事業は低コストで始めやすいです。
そのため、スキルを持ったエンジニアや資金のある企業に自分のアイデアを取られる可能性もあるということです。
自分だからこそできるサービスを作り上げ、真似されない工夫も必要ですね。
IT起業した人成功事例9選
大学在学中にサービスを創造、海外企業での学びを活かした独立など、それぞれがユニークなキャリアと発想で成果を上げています。
共通するのは、ユーザーが抱える問題や社会的課題を「ITと独自のアプローチで解決する」という姿勢と、試行錯誤を厭わない行動力です。
文系出身でも理系でも、未経験でも、行動さえ起こせばITの可能性を掴むチャンスは大いにあります。
「自分は○○だから無理」ではなく、「自分の強みをどうITと掛け合わせるか」を考えるのが重要です。
DeNA:南場 智子(なんば ともこ)
経歴と事業概要
- マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、1999年にDeNAを創業。
- モバオク、Mobage(旧モバゲータウン)などのゲーム・オークション事業で大きく飛躍。
- ライブコミュニティ事業(Pocochaなど)、ヘルスケア・メディカル事業、スポーツ事業(プロ野球球団・横浜DeNAベイスターズの運営)など多角経営にも成功。
成功のポイント
- インターネットとモバイルの成長をいち早く予測し、ビジネスモデルを確立。
- 常に新しい市場へ挑戦し続ける柔軟性とリーダーシップ。
- 経営者目線とデータ分析を重視し、迅速に意思決定する仕組みを構築。
南場さんの本、「不格好経営」を読みましたが、誰よりも努力されている方で、「諦めない」ことの重要性を学べました。
気になる方はぜひ読んでみてください!
タイミー:小川 嶺(おがわ れい)
経歴と事業概要
- リクルートやサイバーエージェントの学生起業家育成インターシップに参加
- 投資家に「Recolle(レコレ)」のプレゼンをして500万円の出資が決まったが、サービスを断念
- 学生時代に短期のアルバイト経験から、「空き時間に働きたい人」と「今すぐ人手が欲しい企業」をつなぐサービス「タイミー(Timee)」を立ち上げ。
- スマートフォンアプリで即時マッチングを行い、シフト制アルバイトの概念を変革。
成功のポイント
- 若者のライフスタイル変化(空き時間の有効活用)に着目し、ユーザーの痛みを的確にビジネス化。
- シンプルなUI/UXで「今すぐ働ける」「すぐ給料がもらえる」仕組みを構築。
- 学生時代の起業ながら大手企業から出資を受けるなど、確かなビジネスモデルが評価される。
小川さんはnoteでご自身の経営体験について発信されています。気になる方はチェックしてみてください。
小川さんのnote:https://note.com/taimee/n/n855d7458a060
食べチョク:秋元 里奈(あきもと りな)
秋元さんは最初はご自身が農業をやろうと思っていたそうです。
全国の農家を回っても門前払いされる中、諦めずに農作業を手伝いに行きお話を聞いてもらえるようになったそうです。
経歴と事業概要
- 大学卒業後にDeNAに勤めた後、農家直送の食材を消費者に届けるプラットフォーム「食べチョク」を25歳で起業。
- 農家・漁師などの生産者を支援しながら、新鮮な食材を手軽に購入できるサービスを展開。
- 生産者のストーリーやこだわりを伝えるマーケティング手法で支持を拡大中。
成功のポイント
- 「生産者と消費者を直接つなぎたい」という明確なビジョンを軸に、ITで課題を解決。
- 食の安全や産地直送ニーズの高まりと合致し、メディアやSNSを活用しながらブランド力を高める。
- BtoCのECモデルだけでなく、飲食店や企業向け事業への展開で多角的な収益基盤を構築。
Mercari:山田 進太郎(やまだ しんたろう)
「メルカリ」は誰もが知るC2Cで有名なサービスですね。
ローンチから1年半の2015年2月時点で1000万ダウンロードを達成し、まだ成長を続けている企業です。
経歴と事業概要
- 早稲田大学在学中に、楽天株式会社にて「楽オク」の立上げなどを経験。プログラミングを学ぶ。
- 複数の起業経験を経て、2013年にフリマアプリ「メルカリ」を創業。
- スマホを使って個人間で簡単に売買できる仕組みを作り、大成功。
- 東証マザーズ(現グロース市場)に上場を果たし、ITベンチャーの代表的ユニコーン企業に成長。
成功のポイント
- スマートフォン普及期に合わせ、個人売買を極限まで手軽にしたUI/UXを追求。
- 海外進出や周辺事業(メルペイなど)への展開で、利用者の利便性をさらに向上。
- データに基づく意思決定と、新しい市場ニーズの探索を継続的に実践。
Wantedly:仲 暁子(なか あきこ)
「Wantedly」も有名なサービスですよね。就活時代に一度は使ったことあるんじゃないでしょうか。
経歴と事業概要
- 1年半ゴールドマンサックスに勤めて退職、Facebook Japanを経て、ビジネスSNS「Wantedly」を創業。
- 「共感でつながる」をテーマに、求人だけでなく企業のカルチャーやストーリーを発信。
- 企業と個人がミッション・価値観で出会うプラットフォームを構築し、若手を中心に人気を獲得。
成功のポイント
- 従来の「給与や待遇がメインの求人サイト」と差別化し、共感やカルチャーフィットを重視。
- SNSの特性を活かした「訪問制度」や「フィード」で、企業と求職者のつながりを強化。
- Tech Crunchの担当者と接点ができて取材を受けて、バズる。
- サービスがアクセスに耐えれず一時停止し、大規模サービスに耐えられるシステムに改善。
- 導入企業数は2万社、会員数では55万人を超える(2017年1月時点)
freee:佐々木 大輔(ささき だいすけ)
経歴と事業概要
- とにかくビジネスをつくるためにやっていたのではなく、大きく世の中を変えることを目指す。
- 2012年にクラウド会計ソフト「freee」を立ち上げ。
- 中小企業・個人事業主向けに経理・会計・バックオフィス業務の効率化を図るサービスを展開。
- 2019年に東証マザーズ上場を果たし、クラウド会計ソフト市場をリードする存在へ成長。
成功のポイント
- 日本の中小企業が抱える煩雑な会計処理の課題を、クラウドと自動化技術でシンプルに解決。
- スタートアップ支援や他社サービスとのAPI連携に積極的で、エコシステムを広げる戦略。
- ユーザー目線のUI/UXづくりと充実したサポート体制で高い継続利用率を実現。
SmartHR:宮田 昇始(みやた しょうじ)
経歴と事業概要
- 大学卒業後約7年はWebディレクターとして会社に勤める。
- 「ハント症候群」という難病を経験し価値観が変わりフリーランスになる道を選ぶ。
- 起業して最初の2年は受託開発で運転資金を調達するも、自社サービスに時間が取れなくなる。
- ベンチャーキャピタルのスタートアップ企業支援プログラムに入る。
- 人事・労務手続きのクラウドサービス「SmartHR」を2013年1月に開始。
- 面倒な社会保険手続きや従業員管理をWeb上で完結し、バックオフィス業務を効率化。
成功のポイント
- 人事・労務のようなアナログな領域に焦点を絞り、根強い課題を徹底的にIT化。
- 使いやすい画面設計とクラウド上でのデータ一元管理により、中小企業から大企業まで導入が拡大。
- タイムリーな法改正対応など、運用サポートに力を入れ、ユーザーの手間を最小化。
Raksul:松本 恭攝(まつもと やすかね)
経歴と事業概要
- 新卒でA.T.カーニーに入社。
- リーマンショックの影響でコスト削減を行う大企業は、印刷が最も削減率の高い費用項目だということを見つける。
- 当時VCがほぼ活動しておらずお金を集めることができなかったので、お金をかけずにできるメディア事業「印刷比較.com」からスタート
- コンサルティング業界を経て、2013年に印刷ECサービス「ラクスル」をスタート。
- 印刷・広告業界の「余剰生産能力」をITでつなぎ、印刷物やチラシの発注を一括管理。
- 物流・広告領域へも事業を拡大し、2018年に東証マザーズ上場。
成功のポイント
- 印刷業界の非効率や工場稼働率の問題を、需給マッチングプラットフォームで解決。
- ベンチャーキャピタルからの資金調達を活用し、大胆なマーケティングとサービス拡充を推進。
- ITが苦手な中小印刷会社との連携方法や価格設定を丁寧に設計し、受注量拡大に成功。
BASE:鶴岡 裕太(つるおか ゆうた)
「BASE」はECサイトを簡単に構築できるサービスで有名です。
経歴と事業概要
- 創業前はCAMPFIRE(クラウドファンディングの会社)でインターンシップに参加し、プログラミングを学ぶ。
- 2012年に無料ネットショップ作成サービス「BASE」をリリース。
- プログラミング未経験の人でも簡単にECサイトを作れる手軽さが支持され、ユーザー数が急増。
- 多彩な決済手段やアプリ連携を展開し、個人・小規模事業者向けEC市場で大きなシェアを獲得。
成功のポイント
- 初心者でもネットショップをオープンできるUI/UX、無料プランの導入が利用者拡大に直結。
- デザインテンプレートの充実やアプリ開発基盤整備で、個別のニーズにも対応可能に。
- 新規事業の連携やM&A戦略などを積極化し、ECプラットフォームとしての価値を高め続ける。
Recursion:田島慎也(たじま しんや)
楽しくコンピュータサイエンスの勉強ができ、エンジニアとしての即戦力スキルを身につけられる「Recursion」。
田島さんがアメリカで共同創業者であるJeffryさんと出会ったことがきっかけでできたサービスです。
経歴と事業概要
- 新卒で東京で大手メーカーに就職。入って2-3ヶ月後に英語の勉強を始める。
- 7-8ヶ月で入社した会社を辞め、アメリカに渡る。
- アメリカでのプログラミング学習を始め、「日本×コンピュータサイエンス教育」の必要性に気づく。
- 日本語でコンピュータサイエンスの学習ができるプラットフォームを作ることを決める。
成功のポイント
- カスタマイズ性の高いクラウドサービスにより、クライアントごとに最適化されたAIソリューションをスピーディに導入し、継続契約を増やすビジネスモデルを確立。
- データ分析やAI導入にハードルを感じる企業向けに、UI/UXに重点を置いた「見える化」支援とコンサルテーションを同時提供。
IT起業に必要なスキル
IT分野で起業する際、もちろんプログラミングなどの技術スキルは大きな武器になりますが、それだけでは成功しにくいのも事実です。
多角的な視点で以下のスキルを身につけることで、サービス開発から事業運営まで幅広く対応しやすくなります。
- プログラミング・システム開発スキル
- ビジネスモデル設計・マーケティングスキル
- プロジェクトマネジメントとリーダーシップ
- 財務・経営管理スキル
プログラミング・システム開発スキル
プログラミングを外注することも可能ですが、費用がかかるため、習得しておくことをおすすめします。
Webアプリやサービス開発に使用される言語を最低でも1つ習得しておくと、開発者とのコミュニケーションが円滑になります。
また、自分で業務効率化ツールを作ったりできるので、何かと便利です。
私は自分でプログラミングスキルを身につけたため、サーバー代のみでサービスをリリースすることができました。
ビジネスモデル設計・マーケティングスキル
次に、ビジネスモデル設計やマーケティングに関するスキルも重要になります。
ITを活用した事業がどのような顧客ニーズを解決し、それをどのように収益化するのかを具体的に描ける力が求められます。
市場規模や競合状況を調査し、自社サービスの価値を数字と根拠をもって示すことで、投資家やクライアントを説得できるでしょう。
とくに、サブスクリプション型や広告モデルなど、多様なマネタイズ手法を理解しておくと、自分のビジョンやターゲット層に合った収益設計を行いやすくなります。
また、SNSやSEO、オンライン広告といったプロモーション手法を駆使することで、ローンチ時の認知拡大やユーザー獲得をスムーズに進められるはずです。
プロジェクトマネジメントとリーダーシップ
サービスを開発するだけでなく、チームをまとめ、事業を拡大していくにはプロジェクトマネジメントとリーダーシップの素養が欠かせません。
エンジニアやデザイナー、営業担当など、多様な専門性を持つメンバー同士が協力しやすい環境を整備することもリーダーの役目です。
自分の考えやビジョンを分かりやすく共有し、メンバー一人ひとりのモチベーションを高めるためのコミュニケーション力が問われる場面も多くなるでしょう。
財務・経営管理スキル
経営者としては財務や経理、資金調達の知識もある程度身につけておく必要があります。
スタートアップの初期段階では、売上が十分に立たない時期が長く続くことが多く、その間をどう乗り切るかが事業継続のカギを握ります。
投資家や金融機関とのやり取りを円滑に進めるためにも、事業計画書をまとめ、損益シミュレーションを行う基礎的なスキルがあると安心です。
会計・税務の基本を理解しておけば、税理士や会計士との連携もスムーズになり、煩雑なバックオフィス業務を円滑に処理できるでしょう。
成功を加速させる起業マインドセット
失敗を恐れず小さく検証する
MVPをまず作ってみて実際に反応を見てみましょう。
また、ユーザーインタビューなども積極的に行うことでニーズのあるプロダクトに近づきます。
- 大きな投資をする前に、スモールスタートで顧客の反応をチェック
- データやユーザーフィードバックをもとに機能追加や方向転換を繰り返す
継続的な学習と自己投資を怠らない方法
- 技術進歩が速いIT業界では、新しい言語やフレームワークをキャッチアップする習慣が必須
- 読書やオンライン講座に積極的に参加し、常に最新知識をアップデートする
人脈活用術:メンター・コミュニティの重要性
- 同業者や先輩起業家と交流できるコミュニティに参加し、情報交換やコラボの機会を得る
- メンターや投資家との良好な関係は、事業方針に迷ったときの大きな指針となる
まとめ IT事業を成功に導くために大切なこと
IT業界は、未経験からでもアイデアと行動力さえあれば大きなチャンスを掴むことができる分野です。
IT領域にはまだまだ未開拓の課題やニーズがあり、誰もが新しいビジネスチャンスを見つけられる可能性を秘めています。重要なのは、自分が本当に興味を持てる課題にフォーカスし、最小限のリソースで実験的にサービスを立ち上げ、ユーザーの反応から学びを得て改善を続ける姿勢です。
私自身も、未経験からプログラミングを始めたことが今の活動に繋がりました。
もし、今あなたが「IT起業に興味はあるけど、未経験だから不安」「自分のやりたいことが本当にビジネスになるのか分からない」と悩んでいるならば、まずは小さく動き始めることをおすすめします。